【思い出話】

初の県大会レースでの思い出

中学校に入学し陸上競技を始めてから3か月程度、私は県大会のレースを迎えました。

出場する種目は中学1年生男子1500m。

これまで地元の大会では同級生相手に無敗の私ですが、エントリータイム4分40秒台後半は出場者18人中6~7番目と、半分よりは少し上くらい。

後に箱根駅伝に出場し実業団ランナーとなる私の、人生初の県大会規模のレースは、長い陸上人生の中でも忘れられないレースの1つです。

当時の事を思い出しながら、レース直前の様子も含めて書いていますので、ぜひご覧ください!

選手の質が変化?

コールとは?

会場に到着後、競技場の大きさと雰囲気に若干飲み込まれつつも、レースの時間が近づいてきました。

ウォーミングアップを終了し、レースの約30分ほど前になると、陸上経験者ならご存じ「コール」の時間が始まります。

ここで「コール」について少々解説しましょう。

「コール」とは「招集」とも言われ、レース開始時間のおよそ20~30分前に選手が指定された場所に集まり、チェックを受けるというものです。

何のチェックを受けるかというと、
・ユニフォームに正しくゼッケンをつけているか?
・変なシューズで出場していないか?
・そもそも出場選手がちゃんと来ているか?

などをレース前に確認するのです。

「コール」を受けなければ「コール漏れ」となり、レースに出場することが出来なくなります。

この「コール漏れ」は、陸上競技者として最もやってはいけない失敗です。
大会会場に来たのにそもそもレースに出れないとか、レースで大コケするとは次元の違う大失態なのです。

そのため、出場者は会場についたら大会プログラムを確認し、コールの開始時間だけでなく場所も必ず確認します。
大きな競技場ならコール場所まで数分かかることもあるため、場所の確認も大事です。

私は大きな競技場での大会がある時は、ウォーミングアップついでにコール場所までのルートを確認するようにしてました。

陸上競技始めたての人は注意してくださいね!!

全員速そう…

コール場所に来て、周りの選手を見渡した時、集まった選手の”質”に非常に驚いたことを覚えています。

というのも、これまでの市内の大会では、選手の実力が非常にバラバラでした。

生徒数の多い学校であれば速い選手が選抜されるでしょうが、生徒数の少ない学校では出場選手を探すだけでも苦労するでしょう。
むしろ、出たくないのに嫌々出場せざるを得ない、そんな状況もあったのではと推測します。

市内大会でのコール会場には、1500mを走るランナーには似つかわしくない体型の選手が混じってたりするのです。

つい、「投擲種目のコールはまだですよ」と声を掛けたくなるような選手が1500mのスタートラインに一緒に並んでいた、そんなこともあったのです。

一方で、今回は県大会です。

県大会への出場条件は、事前に県内を6つに分けた各地区で大会が行われ、上位3人に入る必要がありました(県によって違いはありますが)。

つまり、今このコール場所には県内の中学1年生ベスト18が集まっているため、太い体型の選手など皆無で、全員が速そうな体をしているように見えました。

その中に、エントリータイムが一番速い○○中学校のジャージを着た選手を見つけた時、何となく他の選手より速そうに見えてしまいます。

各選手のエントリータイムを見ていたこともありますが、明らかにこれまでの大会から選手の”質”が変わったことをコール場所で感じました。

いざ、トラックへ

コバンザメ作戦

このレースでの作戦は決めてました。

県大会直前のレースでは、他の選手の後ろについた時、風よけの効果もあってか少し力を温存でき、ラストスパートで1位になれました。

この前回レースを再現しようと考えたのです。

今回も序盤は余裕をもって他の選手についていき、ラストまで力を温存する。

青学の原監督のように作戦名をあえて言うなら、コバンザメ作戦!

自分よりも強い選手が集まっている今大会では、強い選手についていき、力を借りてレースを進めよう!

そんな青写真を描きながら、ついにレースを迎えました。

改めて大きさに圧倒

競技場のトラックに立った時、改めて競技場の大きさに圧倒されました。

Jリーグの試合も行われる県内屈指の陸上競技場は、観客席の多さが桁違い!何段もある観客席がトラックをすり鉢状に囲み、まるで巨大なお椀の底を走るような感覚です。

加えて、トラックと観客席までの距離が広く、また高いのです。

陸上トラックの距離400mは決して変わらないのに、トラックも大きくなったんじゃないか、そんな錯覚を起こしてしまうほどでした。

中学生の県大会ですから、観客席はほとんど空席ですが、それでも最前列ではいろんな中学校の陸上部員が観戦しています。

これまでレース前に観客席から声をかけてくれた顧問の先生も、今は観客席のどこで見てるかよく分かりません。

巨大な競技場でレベルの高い選手に囲まれ、先生の姿が見えないとなると、レース前の緊張と不安がより大きくなります。

それでも、冷静に落ち着いてレースを進めて、ラストスパートまで体力を温存する。今回の作戦を思い出しながらスタートラインに立ちました。

レーススタート!!

全員がサイレンススズカ

ピストルがなった瞬間、私は完全に面喰いました。

全員が先頭を奪いにかかるような猛ダッシュをしたため、冷静についていこうと作戦を立てていた私は完全に出遅れました…

真横を見ると誰もおらず、自分が最下位であることをすぐに把握しました。

スタート直後の猛ダッシュ、この展開は、県大会に集まった長距離自慢たちならではの特性だと思っています。

というのも、今大会出場者18名は言い換えれば県内ベスト18であり、おそらく校内や地元の同級生相手では私のように負けなしだったでしょう。

そんな彼らのレースプランなんて、「先頭に立って逃げ切る‼」がほとんどです。同じ考えを持った選手たちが揃って猛ダッシュし、この猛ダッシュが先頭に立とうとする他の選手のさらなる猛ダッシュを呼ぶのです。

全員がスタート直後で先頭に立つレースプランの中、ラスト勝負を意識していた私が出遅れるのも当然です。

ここで皆さんも一度想像していただきたい。全頭サイレンススズカの中に1頭だけ混じる差し馬の気持ちを。

こうなれば、自分もサイレンススズカになって彼らを追従するしかありません。

結果として、私の考えた作戦はスタート直後2秒で修正を余儀なくされたのです。

そもそも、自分よりもレベルの高い選手が集まる大会で、「体力を温存してラストスパートに!」とかいう作戦を考える浅はかな私に問題がありました…

体で感じた自己ベストの予感

何とかスタート直後の出遅れをダッシュで取り返し、序盤は集団の真ん中やや後方くらいでレースを進めます。

スタート直後の勢いそのままにハイペースでレースが進んでいきますが、400mを過ぎたあたりから徐々についていけなくなる選手が出てきます。

前の選手が落ちてくるたびにその選手を抜いていく、こんなことを繰り返しながら、私は集団での位置を少しずつ上げていきました。

集団の前方では、ペースが落ちたと思ったらすぐに先頭が代わります。

今までの大会は、自分が先頭で走っていたのでレース中盤に少し休める時間がありましたが、このレースにはそんな時間一切ありません。

先頭集団に離されまいと常に必死に走り続け周回を重ねていると、レース前に感じた競技場の大きさも、生徒たちの応援の声も一切気になりません。

さらに言うなら、グラウンドに表示されているタイム表示も見る暇がありません。いかに先頭に近づくか、離されないか、これだけに自然と集中していました。

通過タイムは分からずも確実にベストタイムは出るだろうと、体のキツさが教えてくれていました。

ラストスパートで…

ひたすら前の選手を抜きながら無我夢中で走り続け、残りラスト1周を切りました。

気がつけば、先頭集団は私を含めて7人程度になっており、先頭までも射程圏内の位置で走っていたのです。

ラスト300mを切ったバックストレートでは集団内でも動きが出始めます。1人の選手がスパートをかけて先頭が交代し、さらにその選手に覆いかぶさるようにして他の選手も出てきます。

一気にペースが加速する中、もう私の体力に余裕はありませんが、先頭を見据えながら遅れまいと必死にスパートをかけます。

集団は縦長になりつつ残り100mの直線を向かえました。この時点でも、まだ私は先頭に届く位置にいました。

が、ここで優勝候補だった選手が一気にスパート。

この瞬間のスピードに、「あ、負けた…」と心の中で感じました。自分の残りの体力と脚力ではこのスピードについていけない…と瞬時に分かったからです。

先頭の選手が小さくなる中、さらに後ろからも抜かれて、ラストの直線では順位を下げてのゴールとなりました。

ゴール後

最後で順位を下げたものの、個人的には結果に満足していました。

というのも、レース前のエントリータイム順である6~7番目よりは上の順位でゴールできたからです。

そして、ゴール後の正式タイムは4分30秒台中盤!自己ベストも大幅更新!

緊張から解放され、力も最後まで出し切ったこともあり、わりと満足気にレース後先生のもとに向かいました。

すると、先生から開口一番、「惜しかったな~!!」と。

何の事か分からず聞くと、私の順位は県大会の次にある関東大会や近畿大会規模のレースに進める順位の次点だったのです。

次の大会に何位までが出場できるか、私はそんなこと一切知らずレースに臨んでいたのです。

すでに知ってると思われたのか、緊張させないようにあえて言わなかったのか分かりませんが、先生の顔からは悔しさがにじみ出ています。

ここで少し、中学生の陸上大会の制度をお伝えすると、全国大会に出場するためには設定された参加標準記録を、指定された大会で突破する必要があります。

ちなみに2024年度の1500m参加標準記録は4'08"50であり、中学1年生には手の届くタイムではありません。(私が中学生だった当時は4'11”以上でした)

つまり、現実的に中学1年生が出場できる一番レベルの高い大会は、関東大会や近畿大会規模の大会となるのです。

その大会への出場権を、わずか1秒にも満たない差で逃してしまったのです。

それを聞いて、徐々に悔しさが湧いてきました。

スタートに出遅れなければ選手を外から追い抜く時に使った力を温存できたのではないか、ラスト100mの直線でもう少し頑張れたのではないか、とレースを振り返っては後悔するも後の祭りです。

力を出し切れたレースではあったものの最後に悔しさが残る、そんな形で私の初めての県大会が終わりました。

最後に

私の陸上部からは、3年生の先輩2人も3000mに出場していました。

地元の大会では1.2フィニッシュをするような先輩2人でしたが、県大会では2人とも出場者18人中、10番くらいの順位でゴールとなりました。

地元でも学校でも非常に強かった先輩たちが先頭から大きく離されており、県大会のレベルの高さをまざまざと見せつけられました。

入学してからずっと強かった先輩たちの、完敗する姿を見ると、余計に県大会のレベルの高さを痛感させられるのです。

県大会でこれなら、全国大会っていったいどんなレベルなのか…想像もつきません。

結果として全員が県大会で敗退となり県大会の高い壁を感じつつも、個人的には手の届かないほど離れてはいないと、少しの手ごたえを感じた大会となりました。

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