ある年の7月頃、私は中学1年生男子1500mへ出場するため県大会に向かいました。
陸上競技を始めてから3か月程度、
これまで市内の大会と、隣の市を含めた大会ではそれぞれ優勝して県大会へと駒を進めました。
初の県大会は、中学1年生の生活範囲からしても、今とは比べ物にならないくらい大規模な大会に感じました。
実業団まで陸上競技を続けた私にとっても、初の県大会は非常に思い出深い大会の1つです。
この記事は県大会当日のレース前、会場の雰囲気に若干やられている思い出を書いています。
陸上競技経験者ならもちろん、他のスポーツ経験者でも共感する部分は多いと思うので、ぜひご覧ください。
少数精鋭
まず感じたことは、これまで一緒に戦ってきたチームメイトの人数が一気に減った事です。
というのも、県大会までに出場した2つの大会は、言ってしまえばほぼ地元の大会のようなものです。陸上部員の大半が試合に出ることができ、学校から近い競技場で開催されることから、ほぼ全員で参加していました。
一方、県大会に出場するには、隣の市を含めた大会で各種目上位3位までに入らなければなりません。多くの選手がここでふるいに落とされてしまいます。
加えて、試合会場は県庁所在地にある大きな競技場。住んでいる場所から遠い事もあり、試合に出場する選手だけが競技場に向かうこととなります。
その結果、陸上部員約60名のうち、県大会に出場する約10人だけが顧問の先生の車2台に乗り込み、大会当日の早朝に学校を出発しました。
長距離部員から県大会へ出場するのは長距離キャプテン、エースの3年生2人に私を加えた3人、つまり中学1年生の部で県大会に出場する選手は私1人だけ。
大会のレベルが上がるほどに、当然ながら出場者数は絞られますが、同級生が居ない中、先輩達に囲まれながら乗った車は、誇らしい気持ちの中に少しの寂しさがありました。
競技場がレベルアップ
試合会場に到着して、ます競技場のデカさに驚きました!
競技場って、進化するんですよ!
大会規模に応じて競技場が進化する事をこの時初めて知りました。
とりあえず、以下の画像をご覧いただきたい。

これは、県大会までに出場した大会会場のイメージ画像です。
一番右の画像を見てください。県大会の会場は、トラックの周り全てが観客席で埋めつくされています!この競技場は、陸上の日本選手権やJリーグの試合もやるような、県内屈指の競技場だったのです。
てっきり、「陸上競技場の観客席って基本は芝生なんだなぁ」と思っていたド田舎民の私にとって、中学生から全方位が観客席に囲まれた競技場で走れるとは思いもしなかったのです。
「県大会ってこんなところで走れるんだ!スゲー!!」
会場に着いた瞬間、一気にテンションが上がりました。
逆にこの時がテンションのピークだったかもしれません…
時間のつぶし方
競技場に到着してまず何をするか、陸上部の方ならご存じでしょう。
そう、学校ごとにブルーシートなどを引いて拠点を作ります。
この拠点を「ベンチ」と呼んでおり、出場選手の荷物置きや試合前のストレッチスペース、また試合後の休憩場所等に使うわけです。
というのも、競技場に到着して、自分のレース時間がすぐに来るとは限りません。
野球やサッカー、バスケのように試合時間になって会場に向かうのではなく、試合時間が1番早い選手に合わせて全員で競技場に行くことになるからです。
これは県大会に限った事ではありませんが、大会日であれば1日中競技場で時間を過ごすことになるのです。
要するに、タイムスケジュールによっては、自分の試合時間までめっちゃ暇です!
当時はスマホなんて無く、中学生で携帯電話を持っている人も半分程度でした。ちなみにこの時の私は持ってません。
こんな時どうやって試合時間まで過ごすのかというと、私は大会プログラムを見ていました!
この大会プログラムが結構面白くて、今日行われる試合のタイムスケジュールはもちろん、エントリー選手のリストが書かれているのです。
中でも、自分が出場する試合のエントリーリストは非常に気になります。SNSもない時代、大会プログラムを見て、今日一緒に走る選手達を始めて知る事になるのです。
しかも、県大会のプログラムには、県大会前に行われた各地区でのタイムも記載されており、自分の現時点での順位がハッキリと分かるのです。
私の記録、4分40秒台後半は、出場者18人中6~7番目と半分よりちょい上くらい。
そして、自分よりもエントリータイムの速い選手名と学校名はどうしても気になり、覚えてしまいます。
「○○中学校の○○ってめっちゃ速いやん…」などと、プログラムを見ながら勝手に他の選手を意識しつつ、試合前の時間を過ごしていました。
自分のレースだけじゃなく、先輩が出場する男子3000mのエントリーも見てみると、地区であれだけ強かった先輩達の記録9分30秒が、県大会では真ん中程度に位置しています。
「県大会ってこんなにレベル高いんだ…やべぇな…」
これまでとは格段にレベルが上がったことを、エントリーリストから否応なしに感じさせられました。
サブトラ
大会プログラムを見てるだけじゃ、試合までの長い時間は潰せません。
暇なので、先輩達と一緒に競技場周辺を軽く散策していると、
なんじゃこりゃ!!競技場がもう1つあるじゃないですか!!
そう、この競技場は補助競技場です。その他の名称をサブトラック、通称「サブトラ」です。
ここで1つ豆知識ですが、皆さんは陸上競技場にはランクがあるのをご存知でしょうか。以下の画像をご覧ください。
引用元:https://www.jaaf.or.jp/pdf/about/rule/2023/TAF1.pdf より抜粋
陸上競技場には第1種~第4種までの種類があり、それぞれ基準が決められています。
今大会は第1種陸上競技場であり、まさに県内トップのスゴい競技場だったのです。そして、第1種陸上競技場の基準の1つには、補助競技場、いわゆるサブトラは必須です。
このサブトラは、選手のウォーミングアップ会場として解放されています。試合と同じ環境でウォーミングアップをするため、スパイクを履いて走ったり、ハードルを飛んだりするのに必要な空間です。
ただ、比較的どこでもアップができる長距離ランナーの私にとって、そんなサブトラの重要性が分からず、この近い距離に陸上トラックが2つもある事に対して、「豪華だなぁ」程度にしか思いません。
それよりも、大人数を収容できる観客席を備えたメイントラックと、すぐ側にある控えめなサブトラ、この2つの関係性は、まるで競技場の親子のように見えるのです。
そして、私の地元にある唯一の陸上競技場は、サブトラとほぼ同じ規模でした。
地元であれだけ存在感を放っていた陸上競技場が、ここに来たら子供扱い。これまですごいと思っていたものが、どんどん覆されていく…
「県大会ヤべぇ…」
まだ1歩も走っていないのに、エントリーリストと会場の大きさに気圧されてしまう豆腐メンタルの私。
テンションは、会場に着いた瞬間をピークに右肩下がりのままレースの時間を迎えてしまいそうです…
最後に
サブトラから自分のベンチに帰る時も県大会の雰囲気を感じることができました。
これまで聞いた事のない中学校名や、中学生離れした体格の選手など、さすが県大会!と思ってしまう光景を目の当たりにしました。
中学1年生の私にとって、3年生はただでさえ大きく見えてしまい、さらに投擲選手であればプロレスラーと見間違えてしまうほどです。
どこの中学校が強いとか、そんな情報は一切知らない私でしたが、県大会の会場にいるってだけで、なんだか全員強そうに見えてしまいます。私は雰囲気に飲まれやすいタイプです。
競技場周辺のいたるところに各中学校のベンチが作られ、参加している学校数の多さに驚きながら見ていると、こんな光景も見られました。

そう、県大会出場者がたった1人の学校だったのです。
チームスポーツでも無ければ団体戦もない、個人スポーツならではの光景です。
あまり陸上部に力を入れていない学校でも、個人の能力が高ければ県大会に出れてしまいます。とはいえ地方の学校であれば1人で参加することになるのです。
もちろん引率の先生も来てるでしょうが、中学生1人で大会への参加は寂しいだろうなと思いました。
そう思うと、私の中学校から10人程参加しているのは多い方ですね。4×100mリレーチームが出場していることも大きいでしょう。
競技場近くに中学校がある陸上部は、応援も兼ねて全員で参加していることもあり、巨大なスペースで賑やかに過ごしている学校もありました。
そんな中たった1人で佇む学生を見た時、同じ長距離から2人もの先輩が県大会に出場していることがとても頼もしく、有難くも感じました。
